【照準は “世界”】『ガールズバンドクライ』プロジェクトから誕生した「トゲナシトゲアリ」 彼女達に秘められたバンドの可能性
OVERVIEW
2024年4月より放送、東映アニメーション完全新作オリジナルアニメ「ガールズバンドクライ」。
劇中に登場するバンド「トゲナシトゲアリ」は、実在する同名のガールズバンド。メンバーが各パートの声優を務め、リアルでもバンド活動を展開中。
「トゲナシトゲアリ」の全楽曲を含むトータル・プロデュースを玉井健二&agehaspringsが担当しています。
本記事では、「トゲナシトゲアリ」の音楽が、"どのように世界市場を意識しているのか" に焦点を置き、本作の音楽プロデュースを担当する玉井健二が、これまでに受けた取材を振り返ります。
- アニメもバンドも "ゼロ" からスタートしたプロジェクト
- プロをも唸らせるミュージシャンにするためにメンバー選出のポイントとなった "3つの高い選定基準"
- 楽曲制作段階から意識していたのは "グローバルスタンダード"
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K-POPのクオリティにどうすれば追いつけるのかー
プロジェクトの中で玉井健二がひそかに掲げるテーマとは
アニメもバンドもゼロからのスタート
玉井健二が音楽プロデュースを引き受けることになった経緯とは
▼TVアニメ『ガールズバンドクライ』ノンクレジットオープニング|トゲナシトゲアリ「雑踏、僕らの街」
「ONE PIECE」や「ドラゴンボール」で知られる、日本を代表するアニメ制作会社「東映アニメーション」が手掛ける完全新作オリジナルアニメ「ガールズバンドクライ」。
本作の全面音楽プロデュースを玉井健二が担当、劇中の劇伴音楽プロデュースを田中ユウスケが手掛けています。
「ガールズバンドクライ」の大きな特徴は、TVアニメとリアルなガールズロックバンドが連動するオリジナル脚本であること。
また、プロの声優がバンドをやるのではなく、バンドそのものもゼロからのスタートという、他のアニメ作品とは一線を画す作品となっています。
KKBOXのインタビューでは、玉井健二が本プロジェクトの音楽プロデュースを引き受けることになった経緯について語っています。
2019年末に東映アニメーションの平山プロデューサーから、TVアニメーションとリアルなガールズロックバンドが連動するオリジナル脚本の企画にお誘いいただきました。その際、生半可ではない熱量と共に、他の類似するコンテンツといかに差別化していくか?映像作品としては様々な新しいテクノロジーを駆使してゆくこと、そして、何よりも音楽のクオリティと本気度がいかに重要だと感じているか、といった本企画の主旨を伺いながら、率直に申し上げて “これはエラい話に巻き込まれそうだな” というセンサーが激しく発動しました。
ただ、切々と構想を語る平山氏を眺めながら “ああ、これはまた自分じゃなければ実現できない夢案件だな” とも感じ始めていました。ポイントになったのは “これは本気のガチのバンドなんです” というフレーズでした。“バンド形態” のアニメコンテンツは当時も様々に存在しましたが、ガチのバンドが先行してデビューし、その後にメンバーを主体としたアニメ―ションがスタートする、且つ、なるべく放送が始まる前には売れていて欲しい、など、えーと本気ですか?といった夢想のオンパレードでしたが、もう片方の脳で楽曲と音像をいくつも構築し始めている自分がいることに、もっと驚きました。たぶん最初からこのチームと連動する運命だったんだと思います。
<KKBOX>【特集】agehasprings玉井健二|話題のバンド・トゲナシトゲアリについて徹底取材
▼本プロジェクトについての詳細は、下記記事をご覧ください。
関連記事:東映アニメーションとagehaspringsがタッグを組むガールズバンドプロジェクト『ガールズバンドクライ』、玉井健二が全面音楽プロデュース
既成概念ぶち壊し系エモり散らかしロックバンド「トゲナシトゲアリ」とは?
(L → R)美怜(Dr.)/ 夕莉(Gt.)/ 理名(Vo.)/ 朱李(Ba.)/ 凪都(Key.)
2021年6月に開催したagehasprings主催オーディションを経て結成。
アニメのメインキャスト声優や、主題歌・劇中歌を担当するほか、リアルなバンド活動も展開しています。
プロをも唸らせるミュージシャンにするために
メンバー選考で課せられた高い選定基準
KKBOXのインタビューで、メンバー選定に際して玉井健二が定めた基準と、メンバーそれぞれの魅力について語っています。
トゲナシトゲアリのメンバーを担う5人には音楽的な面で事前に共通する基準を設定させて頂きました。
1.美しく、激しく、正しく旋律を奏で得る才能を備えていること
2.音楽への愛を “尋常じゃないレベル” で抱いていること
3.演奏している姿、それ自体に人々を魅了する素養を備えていること
なぜこの基準か?というと、この3点こそが、凡庸な楽器演奏者と、トップクラスのプロミュージシャンとの決定的な相違点で、この3点のレベルの高さ=そのミュージシャンのレベル、といって差し支えないほど、プロの音楽家を見定めるうえで極めて重要なポイントだからです。
つまり、企画モノとして瞬間的にウケそうな見せ物として派手なプレイヤーよりも、永く玄人を唸らせる真のミュージシャンになり得る素養をあくまで求めた、ということです。3は一見ビジュアルだけの問題のように思われるかもしれませんが、1と2が溢れる段階に到達したとき、結果、3は高いレベルで具現化する能力でもあります。
そして、この基準に於いて膨大な候補の中から選ばれたのが、理名、夕莉、朱李、凪都、美怜の5人でした。
<KKBOX>【特集】agehasprings玉井健二|話題のバンド・トゲナシトゲアリについて徹底取材
▼2023年12月20日 「Get to KAWASAKI 2023」@川崎セルビアンナイトより
関連記事:<リアルサウンド>『ガールズバンドクライ』トゲナシトゲアリはどんなバンド? メンバーが語る、結成~現在までの歩み
関連動画:<みんなの知らない音楽の裏側~agehasprings公式~>【ライブドキュメンタリー】トゲナシトゲアリ 公開練習ライブまでの軌跡《完全版》
グローバルスタンダードを軸に、“日本ならでは” を組み込んだ楽曲制作
日経エンタテインメント!では、玉井健二と東映アニメーション・プロデューサーの平山理志との対談が実現。
“世界基準” を意識した音楽制作について語っています。
「MVは、音楽アニメのコンセプトを1番分かりやすく表現できるものだと思うんです。しかも今回はものすごくクオリティーの高いアニメーションと音楽をセットにして出すことができる。テレビアニメ放送前に本作品のことを一定数のお客様に知っていただくために、まずは10本のMVを出そうとなりました。この作品を海外にもしっかり届けたいなと思っていた時に、たまたま弊社にYou Tuberの事務所に所属していた方が入社されたんです。その方から「世界で見てもらうためには、字幕をいっぱいつけることが重要です」とアドバイスをもらって、MVに字幕を約10カ国語つけて公開したんです。そうしたら、MVのアクセスの6割、曲によっては8割が海外からという結果になって。コメント欄が外国語で埋まったのを見たときは「こんなの見たことない!」と本当にびっくりしました。」(平山)
「音楽ももちろん、世界に届くものにしたかった。
<日経エンタテインメント!>ガールズバンドクライ 急成長続ける海外市場を狙う音楽アニメ
そのためには、グローバルスタンダードを意識しながらも、そこに寄せすぎないことが大事だと思っています。(中略)
実は『ガールズバンドクライ』で僕らが勝算を持っていたのは、「ロック」と「バンド」という部分。
そこは、アジアの人がまだあまり成功していない領域で。Billboardチャートのトップにロックバンドはまだいないし、アジアの経済圏を見ても、それぞれの国で人気のロックバンドはいますが、国をまたぐようなスターは多くない。ロックスターの枠がまだ空いているんです。大きな野望にはなりますけど、そこに向けて研ぎ澄ましていきたい。
例えば、日本人やアジアの人の多くは歌を聴いてる人が多いですが、ダンスミュージックが根付いてる国は、コードの旋律感を聴いている人が多いんです。その人たちにも、いいサウンドだと言わせたい。もちろん日本の楽曲ならではの展開の多さや、歌謡的なメロディーに反応してくれる文化圏もあるので、そこの人たちにももれなく振り向いてもらえる曲に仕上げています。」(玉井)
3rdシングル「爆ぜて咲く」のミュージックビデオが公開から3か月足らずで1000万回再生を突破。
世界各国から感想が寄せられています。
▼3rd シングル「爆ぜて咲く」Music Video
関連記事:【トゲナシトゲアリ】Spotifyバイラルチャートを『ガールズバンドクライ』が席巻中
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「トゲナシトゲアリを追い抜くのに10年かかる」と言われる未来を
リアルサウンドのインタビューでは、玉井健二が「常に意識している」という、”世界で勝てるバンド” の可能性について語っています。
これはこのプロジェクトで僕だけが意識していることかもしれませんが、「K-POPの人たちのクオリティにどうやったら追いつけるか」ということが隠れたテーマとしてあって。あのクオリティを超えるにはあと10年以上かかるんじゃないかと思っていたのですが、僕らでもまだ勝てる隙間が二つあると信じているんです。そのひとつがバンドで、もうひとつがバラード。この二つで国外の人に圧倒的に支持してもらえるコンテンツやアーティストが作れることを、仮説としてずっと持っているんですが、そういった意味ではトゲナシトゲアリも成功の可能性を秘めていると思うんです。僕らが作っているあの楽曲を生で完璧に演奏して完璧なパフォーマンスを観せられたら、国外の人に負けないバンドになるはず。そうすれば今度は「トゲナシトゲアリを追い抜くのに10年かかる」と言われるようになるんじゃないかと、信じています。
<リアルサウンド>玉井健二、『ガールズバンドクライ』の隠れテーマは打倒K-POP? プロジェクトを越えた、世界で勝てるバンドの可能性
▼2024年3月16日 トゲナシトゲアリ1st ONE-MAN LIVE 「薄明の序奏」@横浜1000CLUB より